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雨坊主山 ~名前はオチャラケているけど

2015年11月8日

山歩きでも「掘り出しものだった」と思うことがある。
まだその山頂を踏んでいない、というそれだけの理由で登った山が、その非礼にもかかわらず、シンと胸に染み入るものを与えてくれることがあり”いい山歩きができた”と思えるときである。

今日(5日)歩いた「雨坊主山=あめんぼうず山」1295mもそんな山だった。
この一風変わった名前の山は、映画「人間の証明」の舞台になる「霧積温泉」の北6kmほどのところにある。
近くにある「はまゆう山荘」のスタッフブログによると「この山に雲がかかると雨になる」というのが山名の由来だとある。
また「ドドメキの頭」とか「かながき山」など、こちらも理解不能な別名があるようだ。

Dscn2998 これは昨年5月、雨坊主山の真北にある「笹塒(ささとや)山」から撮影したもので、件のアメンボーは左端にある。
この界隈の山は、おおかた山頂を踏んでいるが、雨坊主は残ったままなのが気になっていたので”片付けておこう”という程度の、軽い気持ちで向かった。

そんな風で特別な期待していなかった。
それが実際に歩き終えたら、紅葉はお見事だったし、人一人出会わない(クマとの遭遇の可能性のほうが高い・・・)静寂さも、塵一つ落ちていない清潔な山道も実に気分が良かった。

このエリア一帯は以前、三洋電気が森林浴用に開発したらしいが今は放置状態で、標識は肝腎なところであらかたは倒壊し、木段は朽廃し、路肩が脆くなっていたりで危険な部位も多く、山慣れた人向きで、その分手ごたえのある山歩きができる。

Static 本日のコース~ピストンなので記録上は山頂がG(ゴール)になっている。

Dscn5107 登山口の広場に建っている案内板。
今朝は車のフロントガラスが凍るほど冷え込んだが、日陰のこのスタート地点は半年以上忘れていた寒さだった。

Dscn5110 梢を透かして角落山のシルエットが見える。
あの山頂に立ったのは何年前のことになるのか・・・

Dscn5113 植林帯は短く、直ぐに自然林に入り、日が当たるようになり寒さから解放された。
標高千m前後のこの辺りが紅葉の見ごろのようで、終始華やかな彩りに包まれた山道であった。
おそらく一秋の間にも数えるほどのハイカーしか入らないこの山で、無数の広葉樹が人知れず装い、散っていき、程なく長い眠りに入る。

Dscn5114

Dscn5116 途中の大きな岩の下の凹地に建っている案内板は注意を促すものであった。
恐らくクマがかじったものとものと思われる傷がついているが、たくさんの標識の残骸も犯人は同じだろう。

Dscn5121

Dscn5118 今朝丸山(左)と人の横顔のような中垣岩(右) ~登っていない山がまだまだゴロゴロしている。

Dscn5125

夢見心地のうちに(イヤイヤ、実際には息を荒げ、重い足を引きながら・・・)角落山と雨坊主を結ぶ尾根に乗る。

Dscn5137 樹木の間に胸が透くような三角錐の雨坊主山。
登れるのか?と思うくらいな鋭く立ち上がっている。

Dscn5135 どうやらカモシカの落し物らしい。
さらに先には熊の置き土産もあったが臭いも映りそうなので?撮影するのは見合わせた。
気休めにホイッスルを吹いたりしたがはたして森のクマさんに届いたろうか。

Dscn5128 四つん這いになる山頂直下では誰もが適当に登路を選んでいるようで、踏み跡が乱れている。
急な直登を避けて右にトラバースしたら小さなテラス状の岩の上に出た。
これまで閉ざされていた視界が一気に開けた。
”浅間ジャン!”思わず声を挙げた。
こんな展望スポットがあるとは意表を衝かれた。
ネットの記事でもこの地点の記述は見かけない。
ここには気付かないままに登っているということだろうか?

Dscn5129 浅間隠山~この山には「矢筈山」の別名がある。
この位置からだと独立峰に見えるが、視角が変わると「矢筈」そのままに小さく鋭い双耳峰に見えるのである。

ここから山頂までは一投足だった。

Dscn5131 小さな石祠がポツンと置かれているだけの静寂な山頂。
木にくくりつけられている山名板文字は消えていることも、この山に訪れる人の少なさを物語っている。

この山は、頂上圏はもちろん、全体的にかなり険しいが、ロープ、クサリ、梯子などの人工的補助手段は全くない。
従って登降にはかなり神経を消耗させられるが、これはこれで潔く、気持ちよいものだ。

Dscn5120

今日あたりも名残りの紅葉を追いかけて名所とされる場所には人が押し寄せていることだろう。
かたや、こんな見捨てられたような山でも木々は誰れに褒められることを求めずにひっそりと装っている。
「人のいく 裏に道あり 花の山」か~日本の秋山は懐が深い

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コメント

誰にも教えたくない山を見つけたようなご気分でしょうか。
それにしても端麗な容をした山ですね。
浅間隠し山は二つの名前を持っていた・・・・〔矢筈山〕夫に教えたいと思います。

ご自分だけの秋山を堪能されました。
熊さんに出くわさなくて本当に良かったデス^^

投稿: おキヨ | 2015年11月 8日 (日) 13時21分

おキヨ様
人も山も百人百様ですね。
金子みすゞなら「みんな違って みんないい」というところですね。
自分だけの隠し玉にしたいところですが、ネットで検索すると意外にたくさんヒットするので、世の中けっこうへそ曲がりが多いものですね。
この山にも「クマに注意」の表示はありますが、脅しではなく、間違いなくここには棲息していますね。
もちろん逢いたくはないですが、もし遭ってしまったら・・・
覚悟が出来ている、とは言い難いですね。

投稿: 風花爺さん | 2015年11月 8日 (日) 15時43分

風花さん、こんばんは

私もある人のフェイスブックを見て、数回興味ある里山に行っています。
殆んど知られていない山、意外に多く驚いています。
人のいく 裏に道あり・・・ 良く知っていますが散財ばかりでした。
今年は山の木の実は豊富の様で、昨年とは打って変わって
目撃件数が激減しています。  とは言え。。。

投稿: 岳 | 2015年11月 8日 (日) 19時18分

岳様
平均的に評価すれば名の通った山のほうが良い山があるのは確かです。
3百名山から外れているような山にはやはりそれだけの理由があるのでしょう。
それでもあえて外れの山に行くのは天邪鬼なのか、たまにビックリするような発見があるからですね。
そうですか、クマの目撃情報は減っているのですか。
それでも出るときは出るんでしょうね。
そんな目には絶対に会いたくないですが・・・。

投稿: 風花爺さん | 2015年11月 8日 (日) 19時53分

静寂もまた景色だと思うと、こういう山との出会いは
一層嬉しくなりますね。

それにしても青空に映る紅葉が綺麗です。
羨ましくなります。

投稿: itta | 2015年11月 9日 (月) 21時48分

itta様
人が山へ行く理由の一つには生活圏では得られない「静寂」さを求めていることがあるのではないでしょうか。
ittaさんが好んで入られる南ア深南部にはその「静寂」が残されている貴重な山域なんでしょうね。
あたり一帯に人の気配が絶えているあの「シン」とした静けさは山でなくては得られませんね。
写真では残念なことに肉眼で見た色の再現が思うようにできません。
静岡の山はまだ紅葉の追っかけができるのでしょうか。
関東では名残りの紅葉になり焦りもあります。

投稿: 風花爺さん | 2015年11月10日 (火) 06時40分

もう何年も前に山仲間ではない友人と霧積温泉に行ったことがります。
その時に「鼻曲山」とか「浅間隠山」とか頭にインプットしたのですが、未だに登ることが出来ないでいます。
この山もインプットして来年こそは行ってみたいです。
そして「金湯館」に再び泊まってみたいです。

投稿: noritan | 2015年11月12日 (木) 04時49分

noritan様
霧積温泉は湯温が低いのでなかなか浴槽から出られない、という記憶がありますが・・・
雨坊主山は山好きな方ならその良さが分かるかと思いますが、やはり通好みの渋い山でしょうね。
この辺りの山に初めていおいでになりのであれば、一番のお勧めは「浅間隠山」になりますね。
劔岳まで見える大展望はこの山ならではです。
二度上峠から東側に下った登山口付近に広い駐車場があり、アクセスにも問題ありません。
それに次ぐのが鼻曲山でしょうか。
機会を作って是非お出かけください。

投稿: 風花爺さん | 2015年11月12日 (木) 07時18分

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