« 怪我の功名で ~栗原山から南小太郎山 | トップページ | 季節のアンソロジー ~五月 »

食らいついたが歯が立たなかった西上州・高岩

2015年5月8日

そのあくる朝、左手の小指が青黒く変色していた。
昨日(5月6日)高岩(南軽井沢)から下山中、脆いルンゼ(狭い岩の溝)をロープで下降している途中でロープに振られ、左腕から手の甲にかけて岩にぶっつけた跡である。

一時期、かなり足しげく通ったので西上州の山はあらかた山頂を踏んでいる。
しかしながら自分の力量からするとすこぶる難易度が高くて、行くかどうか逡巡を余儀なくされるものが幾つかある。

高岩1084mもその一つ。
上信道や碓氷バイパスの群馬、長野県境あたりで、ニョキッと二つの鋭い岩峰を突きたてた山がいやでも目に付く
まるで地表から2本の角が生えたように見える。
これを見ると萩原朔太郎の詩「竹」を思い浮かべてしまう。
 
光る地面に竹が生え
 青竹が生え (中略)
 青空のもとに竹が生え
 竹 竹 竹が生え

さらにまた岸壁のどこかで久恋のミョウギコザクラ(ミョウギイワザクラ)を見たという記録もあったので、それにも駆り立てられた。

Dscn4481 足元の恩賀集落から見上げる高岩
右が雄岳、左が雌岳。
この風景は、同じ西上州で大上集落から見上げる立岩の眺めと同様、イタリアアルプスのドロミーティを彷彿させるので、西上州のドロミーティなどと呼ぶ向きもある。
恩賀集落の路側に駐車して出発。

Dscn4458 雄岳と雌岳のコル(鞍部)が近い。

Dscn4459 写真では分かり難いが、画面ほぼ中央のルンゼ(狭い岩溝)状に3連の鎖が下がっている。
ザックを取り着きにデポして
一番目は70~80度くらいの傾斜でこれは何とかクリアできた。
二番目の鎖は傾斜が増しほぼ垂直に見える。
四角いチョックストーンにスタンスがとれず、なんどもね目回したが手の出しようがない。
今日は誰もこの山には入っていない。
事故を起こしたら自力で何とかするしかない。
ここはムリは禁物・・・ということでここで退却に決めた。
チムニー(煙突を割ったような凹角)を見よう見真似のバック&ニーで降りた。

腕力、身体能力共に標準以下、徒に体重ばかりが標準を突破している私ではしょせんムリ
食らい着いてみたものの歯が立たなかった。
私の印象では難所の代名詞になっている剣岳の「カニのたて這い」よりそうとう難易度が高い。

コルに戻り雌岳に向かう。
傍から見たままに、頂稜一帯は至るところで滑落したら命は保証されない危険な場所だらけ。
おまけに高度感十分で、高所恐怖症の私は緊張しまくり。

Dscn4461 振り返ると裏妙義の西大星などがのぞく。

Dscn4463 雌岳P1から雄岳を振り返る。
真ん中の凹部が登路にになっているのだろうか?

Dscn4465 P1から軽井沢・碓氷ICを見下ろす。

Dscn4467p2p2 P2 ~足元に近づくこともできない。

Dscn4470 P3~開いている窓の向こうに浅間山が納まっている

Dscn4471 P3から上信の山波と浅間山

Dscn4476 緊張がほぐれた鼻歌まじりに下っていったら、フイにグズグズに脆いルンゼの上に出た。
”こんなのあったの・・・聞いてないよ!”
ロープにすがって下降する途中で、ロープに振られて左腕を岩にぶっつけてしまった。

Dscn4478

古い林道に降り立ち、道なりに高度を下げると車が激しく行きかう車道に出た。
碓氷バイパスか?
自分の位置が判断出来ないままに車の走行に内心ビクビクしながら車道を歩いた。
程なく上信道の「軽井沢・碓氷IC」の交差点になった。

Dscn4480 左へ下れば再び恩賀の集落
見上げる高岩は人間を拒絶するよう沈黙のまま。
人は何を求めてあんな山に登ろうとしたのか。
鎖のないころ、どのようにしてあの頂上にたったのだろうか?

「思い出を残して歩け。すべての場所について一つびとつの回想を持つがいい。それは他人から奪い取ることなしにお前が富む唯一の方法なのだ」 ~尾崎喜八

雄岳の山頂には立てなかった。
ミョウギコザクラにも出会えなかった。

A
それでも、今日も少しだけ心の「冨」を積み上げることができたような気がするのだが・・・・・・.

|

« 怪我の功名で ~栗原山から南小太郎山 | トップページ | 季節のアンソロジー ~五月 »

登山」カテゴリの記事

コメント

風花さん、こんばんは

チャレンジ精神旺盛ですね!
私は妙義山の岩で手を切ったことがありますが、
山では怪我はつきもの、と思う様になってしまいました。
今日も痛い目に遭って来ました。。。

投稿: 岳 | 2015年5月 8日 (金) 21時08分

見慣れた岩山ですが、まさか登れる山だとは思っても居ませんでした。
藤原正彦著〔とんでもないやつ〕の中から見つけた言葉ですが人類最初の月旅行に〔なに用があって月に行く〕といった方が居たようで、驚きから出た言葉でしょうね。

いえ、高岩のあまりの険しさに仰天してつい私も〔なに用あって〕・・・つまり風花さんの旺盛な冒険心に感嘆いたしました。

投稿: おキヨ | 2015年5月 9日 (土) 15時53分

岳様
山に入ると無傷では帰れない日がどうしてもありますね。
特段の危険がない場所でも何かの拍子で傷つくこともままあることです。
注意はしていても、それをズーッと持続することはムリです。
私も手や足の生傷が絶えない感じです。
岳さんが痛い目に遭った、ということはどうされましたか?

投稿: 風花爺さん | 2015年5月 9日 (土) 19時10分

おキヨ様
上信道の走行は貴家では定番ルートですから、高岩はもう数えきれないほど目にされていることでしょう。
山登りされない方なら”すげー山があるな~”で終わりでしょうね。
因果なことに高い所に登りたい人種は、見ているだけは済まなくなってしまうのです。
高岩なんかに初期のころ登ろうとした人たちは一体何を考えたのでしょうね。
あの岩山のテッペンには黄金があるに違いないとか、自分が神様になれる場所だとでも考えたのでしょうか。
とても興味があるのですが、それを知る術はありません。

投稿: 風花爺さん | 2015年5月 9日 (土) 19時18分

西上州と云えば妙義山が浮かびますが高岩ですか・・・
凄い岩山ですネ~ チャレンジーされた風花様も
冒険心旺盛に頭が下がります。

当方ならば指を咥えて見ているだけどす。この年になって・・・まぁ~無理はしたくないと云うのが建前で本音は弱虫です。

それにしても少し高見に登ると浅間山が見えたり、上信越の山々が眺められるのは羨ましい限りです。

投稿: かおり | 2015年5月13日 (水) 17時11分

かおり様
自分が見えていないのか、見の程知らずなのか、いつになっても怖いものみたさの気持ちが消えてくれません。
それでも確実に身体能力は低下しているわけですから、ちょっと厄介な所になるとクリアできなくなってきています。
無理しなくても山は十分楽しめるのですから、私も軌道修正をはかるタイミングですね。
いつもかおりさんには羨ましがられますが、実際に関東圏は実に多彩な山が揃っているので、山の選択には事欠かないのですが、多すぎてえらぶのに悩むことになります。

投稿: 風花爺さん | 2015年5月13日 (水) 20時33分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/393418/59900155

この記事へのトラックバック一覧です: 食らいついたが歯が立たなかった西上州・高岩:

« 怪我の功名で ~栗原山から南小太郎山 | トップページ | 季節のアンソロジー ~五月 »