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『オオカミが日本を救う』か・・・・・・

2015年1月6日

山歩きの回数を半減することにしたら、ヘンに間が空いてしまい気分的には山歩きをやめてしまったかのようになっている。
けっしてそうではないのであって、昨日(5日)は歩き初めで南高尾の稜線を半分ほど辿ってみたが、ブログにするほどの中味がなかった。

このところ関心を持っているのが、幻の獣・ニホンオオカミのことで、関連する資料に目を通している。
とりあえず知ったザックリした内容を整理しておこう。

中村芳雄男氏の著書『丹沢・山暮らし』によると、昭和28年ころの丹沢におけるシカは推定50頭とされ、絶滅の危機に瀕しているとされていたそうである。
~主因は駐留軍兵士らの狩猟とされている。
現状からするとウソみたいだが、とにかく危機感を持った神奈川県では保護のため昭和35年まで禁猟期間とし、さらに国定公園に指定されたことで、シカの保護が実効を挙げることとなった。
~そう言えば私が沢登りのために丹沢へ通った昭和30年代ではシカの姿を見た記憶がない。
半世紀ほどの歳月が流れ、丹沢山塊は予想だにしなかったシカの増えすぎによる深刻な被害に頭を抱えることとなった。

丹沢の例は日本全体の縮図でしかなく、今日、日本の至る場所での山野で深刻な問題になっている増えすぎたシカによる食害の一例でしかない。
森林荒廃、貴重な植生被害、南アルプスでの雷鳥被害、尾瀬の湿原荒し,知床半島など、各地で生態系の破壊、農作物被害など我が物顔で国土を蹂躙するシカの跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)に翻弄されている。

もちろんシカ自体が害獣ということではなく、問題は山野が持つシカの収容力を、シカの頭数がはるかに超えてしまったことである。

行政も手をこまねいているわけではなく、ハンターによる狩猟を強化しようとしているが、ハンターの減少や高齢化により効果は挙がっていない。
新手の捕獲檻なども開発しているが、増殖するシカの前にはまさに焼け石に水である。

さて、どうすればいいのか・・・・・・

私にとっても関心事であっところ、とても興味を惹かれる提言に一年ほど前に出会った。
白山書房が発行している『山の本』2013年秋号に載った、丸山直樹さんの
「オオカミを日本に放つ」という一文である。
要旨は「シカの被害を食い止め、生態系を昔のようなバランスのとれたもに戻すために、今は絶滅しているシカの天敵(頂点捕食者)であるオオカミ(ニホンオオカミ)を再導入すべし」というものである。

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昔の日本では、農作物を荒らすシカやイノシシなどの害獣の駆除者としての益獣・オオカミ(山犬)に感謝の念を込めて、山犬信仰が盛んであった。

A_5 奥多摩・臼杵山の山犬像 ~奥秩父や奥多摩エリアにはこのような像が多くある。

私もそうであるが、今の日本人は誰一人オオカミの実物を見たことも無いのに「狼藉を働く」などの言葉に象徴されるように凶暴で恐ろしい獣というイメージが定着している。
しかし、研究者によればオオカミは人を恐れる動物で、人が襲われたとされるケースの多くは実際には野犬や家犬の仕業で、どうやらオオカミは濡れ衣を着せられているというのが真相らしい。

「送り狼」という言葉がある。
その言い伝えの由来は一様ではないが、おおむね歩いている人の後ろにピタリと狼が付き添い、安全なところに着くと姿を消す(異説もあるが・・・)というもので、これなどもオオカミが危険な動物ではないことを現している。

~そういえばアイドル・石野真子ちゃんも「オオカミなんか怖くない」って歌っていたもんね・・・。

ニホンオオカミが絶滅されたとされているのは、1905年奈良県・吉野村で捕獲されて以来、その姿の目撃情報がないためである。
~絶滅の原因は、狩猟、イヌジステンバーなどによるもにとされている。
それゆえに、オオカミとはどんな生き物なのか、その生態はどのようなものであったのか、なぜ絶滅したのかなどオオカミを巡る謎は多く、実物が存在しない今日、その解明はますます難しい。

今読んでいる『オオカミの謎』では著者の桑原康生氏が実際に7頭のオオカミと暮らしての体験に基づく生態を書いているが、それも「いまわかってる事実」のみであり、だから「オオカミとはこういう動物である!とは決して断言できない、としていて、オオカミがいかにミステリアスな生き物であるかを諭している。

Img164

シカの駆除方法に効果的なものがない現状では、オオカミの「再導入」提言は真面目に取り組んで欲しい命題に思える。
ところがこうした革新的な提言は常に保守的な役所と学者の反対か無視にであう。
役人の無謬病のために、これまでの対策に誤りがあったとは認めたくないために、狩猟の強化とかジビエ(野生動物の料理)振興とか、期待する方がムリな手段に相変わらずすがろうとしている。
反対論の中にはオオカミの人に及ぼす危険性や生態系の破壊になる、などの理由を挙げているが、それらは科学的な根拠を持たないようである。

さてそのような抵抗をはねのけて、私がいずれかの日、山で道に迷い、暗くなった道をトボトボ歩いていると、いつの間にかオオカミが私の後ろについていて、私が安全な所に着くまで見守ってくれる、そんな日がやってくるのだろうか。

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コメント

風花さん、こんばんは

全くその通りと感銘する、いいお話だと思います。美ヶ原などでも数十頭のシカの群れが報告されていますが、鉢伏山などでは、樹皮を食べられた木がすべて枯れてしまっています。山でなくても里で見かける動物、鹿、サルの多いのには驚きます。送り狼に石野真子、メルヘンですねhappy01

投稿: 岳 | 2015年1月 6日 (火) 21時36分

対人間との共存で考える動物は、動物そのものの持つ凶暴性とは別の次元の問題なのかもしれませんが、難しいですね。
一方では増えすぎて被害に困る山域が有り、一方では鹿は秋の季語で、優しいと俳句に詠まれたりしていますね。
コロボックルヒュッテに今年行った時には、手塚氏も同じような考えで、オオカミを再び日本へと言った著書が数冊置かれていましたが、日本には居ないオオカミを輸入するとなると又、問題が発生するのでしょうね。
難しい!難しい!としか言えませんが・・・

投稿: noritan | 2015年1月 7日 (水) 04時38分

岳様
昔の日本は長い時間をかけて自然の生態系がバランスのとれたもにになっていました。
それが「頂点捕食者・オオカミ」の絶滅で、シカなどの天国化してしまい、現在の環境破壊を生んでいるのでしょうね。
オオカミの再導入を主張する立場の論は簡単にいえば「自然のことは自然にまかせろ」ということなんですね。
効果の上がらないハンターによる駆除なんかに頼らないで、オオカミに任せる方が、効果的で安上がりだと言っています。
その通りいいことづくめでいくのかどうか私には判断できません。
反論もあるでしょう。
ただ、言えることはこのままでは貴重な自然環境の破壊に歯止めがかからず、取り返しのつかないことこまで進んでしまうのではないかという危機感が募る、ということですね。

投稿: 風花爺さん | 2015年1月 7日 (水) 09時07分

noritan様
深刻化するシカやイノシシなどによる自然環境破壊を防ぐために、オオカミを再導入するという提言については賛否両論が渦巻くことは容易に想像できます。
難問であることは確かです。
私たちには熊と同様に「狼は凶暴な生き物」というイメージが強く擦りこまれていますから、もしオオカミが私たちが歩く山に居る、ということを想像したら猛烈な拒否反応が当然起こるでしょうね。
研究者などによればオオカミは人を恐れるそうで、人を襲うことはゼロではないとしても、特別な理由でもなければ人をみれば自ら逃げるのだ」そうです。
私には一つの想像として、昔尾瀬の湿原が人によって無残に荒され、6~70年かけようやく復元しつつあるアヤメ平のようなことが、今シカによってあの悪夢が蘇ろうとしているのではないかと杞憂があります。
そうした心配を防ぐ手段として最も有効で、経済的な方法が、昔の日本の姿に戻す「オオカミの再導入」にあるとすれば、それは真面目に議論する価値があるのだろうと思っています。
それが最良なのかどうか、基礎的な理解、知識が足りない私にはまだ判断がつかないので、もう少し勉強してみます。

投稿: 風花爺さん | 2015年1月 7日 (水) 09時33分

車で通過しただけでも猿やカモシカに遭遇してしまうのですから、その増加は容易に察することが出来ます。

以前私も、絶滅したオオカミを再び山に・・・という考案を何かで読んだ記憶がありますが、人間も構歩き人口が増えている時代ですから当然賛否両論となるでしょうね。

第一日本オオカミが絶滅しているのですから、オオカミを放つといっても、外国種?になってしまう?というのは特に問題ではないのでしょうか?

投稿: おキヨ | 2015年1月 8日 (木) 12時57分

おキヨ様
オオカミも多の生き物同様に、環境による独自の進化をしてきていますから、絶滅したニホンオオカミと同一のものを再導入することは不可能でしょうね。
謎の多い動物なので、断定的なことは誰も言えないようですが、そもそもは日本も一つにつながっていたころのユーラシア大陸のオオカミの末裔ですから、祖先が同じ種類のオオカミの再導入、ということになるのではないでしょうか。
再導入には多くの難問が立ちはだかるでしょうから、案単に実現するとは思えません。
仮に実現したとしても、それが実際にシカを適正な頭数にまで減らすまでにはとてつもない時間がかかるでしょう。
それまでの間、シカには移動の自由を持たない貴重な植物、湿原、あるいは雷鳥などには手を出さないように行動を慎んでもらえればありがたいですね。

投稿: 風花爺さん | 2015年1月 8日 (木) 20時25分

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