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樺の丘~霧ケ峰・山彦谷周回尾根を歩く

2014年10月1日

日本の山には明確な季節感があり、四季それぞれの姿がある。
それでも一番魅力に溢れる旬もまたある。
霧ケ峰一帯の草原が一番それらしいたたずまいになるのは、秋から晩秋にかけてである、と私は思っている。
草原が草紅葉に彩られ、やがてきつね色に静まるそのころ、乾いた北西からの風に吹かれて、このたおやかな稜線を歩く、それだけでヒタヒタと幸福感に満たされる。
昨日の黒斑山に続き、今日(9月29日)
霧ケ峰の外縁、大笹峰周回コースを21名で歩く。
私はショートコースを担当することになっていたが、全員ロングコースになったため、図らずも私もフルコースで歩けることになった。
ラッキー!

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足早く、山を鮮やかに彩るのはツタウルシ。

コースはエコーバレースキー場を起点として、大笹峰~山彦北ノ耳~南ノ耳~殿上山と反時計周りに歩きエコーバレーに戻る、というもの。

Dscn3408 丘のような大笹峰 ~丘の向こうに何がある?
こんな平頂でも草に埋もれた三角点(三等)標石がある。

Dscn3410 丘の向こうには蓼科から始まる長大な八ヶ岳連峰の胸躍る眺めがある。

Dscn3413 秋色の草原をいく。

Dscn3415 ♪風たちぬ いまは秋  今日からわたしは 心の旅人・・・♪なんて歌ったのは聖子ちゃん

Dscn3417 大惨事がウソのように御嶽は静かに噴煙をくゆらせている。
あそこでは今も懸命な捜索活動が続けられているのだが、それが現実感を伴なわないほど、ただの一つの風景となっている。

Imgp4_2 山彦北ノ耳 ~終生霧ケ峰を愛した手塚宗求さんが、遭難時における活動のために命名した。

さて、今日の行程で私がどうしても寄り道したかったのが、これもまた手塚さんが名付けた「樺ノ丘」(三本樺ノ丘とも・・・)

Dscn3428
手塚さんがコロボックルヒュッテを始めたころには、ここで三本の見事な白樺が高原の点景をなしていた。
手塚さんはそこに「三本樺の丘」という名を与えた。
高原を往く人たちに優しい木陰を与えていた白樺たちは、そのころ既に老境を迎えていたようである。
そしてある時、高原を襲った強風が、彼らの命を絶った。

Dscn3427_2
白樺の遺骸に鎮魂の祈りを捧げていた手塚さんは、その足元に何本かの白樺の幼樹が芽を出しているのに気付いた。
やがてこの頼りない命が、樺の丘に新しい「オン・ブラ・マイ・フ=なつかしい木陰」をつくりだすことを夢想した。
夢はその通りになった。
今8~9本ほどの青年期の白樺が、高原をわたる風に梢をそよがせ、家族連れが憩う木陰をつくっている。

Img143 昭和9年ころの「樺の丘」~もちろん当時は無名の場所であった。(『わが高原 霧ケ峰』手塚宗求から借用)
樹間から見える蓼科山の山容は少しも変わっていない。
手塚さんが出会ったのはこの壮年期の白樺が、さらに老成した姿であった。

今の白樺も、その親に当たる?当時の白樺も同じような傾きを見せている。
ここを抜けていく偏西風がいかに激しいものであるかを、如実に示している。

何の変哲もないただの白樺・・・。
しかし、そこにも胸に染み入る物語が綴られている。
それは私にも感受できる。
しかし、それを余すことなく伝える表現力は持ち合わせていない。

 

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登山」カテゴリの記事

コメント

数年前に姫木平のペンションに泊まったことはあります。
エコバレースキー場を山彦谷と言うのですね。
山彦尾根も歩いたことはなく、いつか、このコースを歩いてみたいと思います。
本当に、霧ケ峰、八島湿原この広大なエリアは何度でも、コースを替え、季節を替え、歩きたいところですね。
ツタウルシ綺麗ですね。

投稿: noritan | 2014年10月 2日 (木) 01時13分

noritan様
山彦谷をそのまんま英語にしてエコーバレーなんですね。
手塚さんは霧ケ峰の範囲に含めていますが、山彦谷は雰囲気が少し違うように感じます。
霧ケ峰周辺は一番良い季節を迎えようとしているので、何度でも足を向けたいのですが、他にもいろいろ歩きたい山があるので悩ましいですね。
特に越後の山はブナの渋い色づきが趣深くて、日本の秋山の神髄に触れられるようで、是非一度は、と思っているところです。

投稿: 風花爺さん | 2014年10月 2日 (木) 06時23分

私もツタウルシが印象に残りました。
実は先日初めてみました。ということはこの季節白樺湖、霧ヶ峰方面には来なかった?ということになりますね。

投稿: おキヨ | 2014年10月 2日 (木) 12時59分

おキヨ様
秋の山ではおそらくツタウルシが一番早く紅葉するでしょう。
秋にさきがけ突然にその存在が目だちます。
ウルシの一種ですから敏感な人はかぶれます。
過敏な人は傍を通過するだけでかぶれる、といわれていますが、真偽のほどは分かりません。
あまりに鮮やかなのでつい手を触れたくなりますが、ウルシと聞くと誰もがその手をひっこめてしまいます。
美しいものには毒があったり、トゲがあったり、これって人間の世界にも共通している・・・なんてことはありませんね。

投稿: 風花爺さん | 2014年10月 2日 (木) 15時29分

風花さん 、こんにちは

ツタウルシは綺麗ですね。松の大木にたくさん這っている場所があります。 これもかぶれるのですね!数年前実家の近くでウルシにかぶれて以来、恐怖心があります。

投稿: 岳 | 2014年10月 3日 (金) 15時25分

岳様
御嶽山の悲劇をよそに季節は巡ってきますね。
被災者の関係者にとっては紅葉どころではなく、むしろ山を恨めしく思っているかもしれません。
私はうるしにかぶれた経験はありませんが、そういう人をみたことはあります。
酷いものですね。

投稿: 風花爺さん | 2014年10月 4日 (土) 06時46分

前日の黒斑山に次ぐ霧ヶ峰山行、素晴らしき秋の好天に
富士山から八ヶ岳連峰の大展望には目を奪われました。
この夏登った編笠山も良く見えますネ。

狐色に染まる大草原は、とても味わいが感じられ
お写真を拝見しているだけで出かけたい気分にさせられます。

手塚さんが愛してやまなかった秋の雰囲気溢れる、白樺の木が立つ
樺の丘から山彦谷周辺を、この目で見たくなりました。

御嶽山噴火、紅葉見頃の真昼時に多くの登山者、不運としか云いようのない
大惨事にただただ言葉を失うばかりです。

投稿: かおり | 2014年10月 4日 (土) 10時49分

かおり様
あの日、あの時そこにいなければ命を失うことなどなかったのに・・・
御嶽山の痛ましいできごとは、そういう偶然がもたらしたものですね。
私たちが山に行く限り、いや生きていく限り、このような偶発的な悲運は付きまとっているのでしょうね。
それにしても季節の足取りは律儀であり、早いものです。
気がつけばもう秋なんですね。
ボヤボヤしていられません。
一期一会の秋を大事に過ごしたいものですね。
山が、高原が待っていますから・・・。

投稿: 風花爺さん | 2014年10月 4日 (土) 11時48分

風花さまのご紹介により『邂逅の山』を読み、たちまち手塚宗求氏の虜になってしまいました。読書が好きな友達二人に、宝物のように思うこの本の話しましたが、登山をしない人には意外に知られていないようですね。
白樺は『邂逅の山』の「樅の森」にも「挽歌、白樺と水楢の木に寄す」にも深い愛情を持って描かれていますが、その地を訪れることができない私にとって、写真を見せていただけるのは本当にうれしいことです! お礼を申し上げます。

投稿: 淡雪 | 2014年10月 9日 (木) 10時58分

淡雪様
手塚さんのことは山歩きをする人でもほとんど知らないと思います。
マスコミ受けをするような派手派手しいことはお好きではなかったはずです。
多くの人は(私もそうですが・・・)目立つことは決して嫌いではないのですが、手塚さんはそうではないほうに分類される方ですね。
樺の丘近くの水楢も、白樺と同じ運命をたどったようですが、私はその痕跡は確認していません。
霧ヶ峰の大草原には目立つ樹木が少ないので、もう少しランドマークになるような木が欲しいですね。
またいつか霧ケ峰のことをご紹介できるブログのアップができるよう心がけています。

投稿: 風花爺さん | 2014年10月 9日 (木) 19時32分

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