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「アンナプルナ南壁」を観る

2014年10月10日

2008年5月、スペインの登山家イナキ・オチョア・オルツアはアンナプルナ8091mの7400m付近で、高山病のため動けなくなった。
同行のホリアが発したSOSに呼応した各国の11人の登山家が救出に向かった。
イナキは生還できなかったが、救出に当たった登山家たちがどのような思いを抱きながらその困難なミッションに立ち向かったのかを、インタビューで構成した映画である。
なので、ヒマラヤの圧倒的な山岳風景はほとんど出てこない。
それを期待すると肩透かしをくうことになる。
この映画はヒマラヤ登山をテーマしたものでなく、人が人を助けることの意味を問いかけ、その答えが実に単純明快なことであることを教えてくれる。

この映画が伝えようとしているメッセージは「(人は)助け合ってこそ生きられる」ということ。
助けが必要なヤツがいたら行く、それだけのことだ!という単純明快なものである。

A_3

A アンナプルナ南壁

登山は自己責任の世界だるという考え方は主流であるし、それはそれなりに正論であろう。
チームを組んだ登山でもヒマラヤの高所登山では「登れる奴は登れ、ダメなのは捨てておいてよい」というような究極の自己責任論もある。
しかし、それが全てであるとしたらならばパーティを組んで登る意義はいったいどこにあるのだろうか?

イナキは命の灯を消してしまうが、この救出チームはその崇高な使命感に支えられた勇気ある行為により「ピオレドール賞」(登山界におけるアカデミー賞のようなもの)を受賞する。
中でも、最初にイナキのところに到達したスイスの登山家ウーリー・ステックの名は初めて知ったが、今一番熱いクライマーという評価を得ているのだそうである。

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彼はかのアイガー北壁を3時間足らずで駆け上り、2013年にはこのアンナプルナ南壁をソロで登攀している、という桁外れぶり。

救出劇といえば笹本亮平の『その峰の彼方』は先ほど読み終えたばかりだが、当然架空の物語である。
実話で一番身近なのは竹内洋岳が2007年7月ガッシャーブルムⅡ峰で雪崩に巻き込まれ、背骨が折れ、左の肺がつぶれるという瀕死の重傷を負った時にも劇的な救出劇があった。

A

この時、ドイツ、スペイン、スイスなどの6人の救助によってヘリ輸送にまでこぎ着け、奇蹟としか言いような生還を果たす。
命を救い上げて貰った竹内がその後日本人最初の14座登頂を果たしたことは周知の通り。

アンナプルナ南壁 ~ヒマラヤでもっとも危険なルートとされ、死亡率が40%と際立って高くキラーマウンテンとも呼ばれている。
この南壁の登攀に最初に成功したのは、ヒマラヤ鉄の時代の幕開け1970年5月、クリス・ボニントンが率いる隊が初登攀に成功。

しかしアンナプルナとくればやはりこれでしょう!
1950年、モーリス・エルゾーグが率いるフランス隊は人類が最初に到達した8千mとしてアンナプルナの登頂に成功した。
長く記憶され、語り継がれる壮挙であった。
~もっとも、人類はそれより早くアンナプルナより高い所に到達はしているのではあるが・・・~
この時のフランス隊の顔ぶれが凄かった。
エルゾーグとともに山頂に立ったルイ・ラシュナルのほかガストン・レビュハ、リオネル・テレイ・・・
山に目覚めたばかりの私には眩しすぎるスーパーアルピニスト揃いで、これぞドリームチームであった。
人類初という栄光と引き換えに登頂した二人は手足の指30本を失うという壮絶な代償を払った。

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深田久弥が夢中で原書を読みふけったという、この感動の書は世界のベストセラーになった。
その最後は次のような感動的な文章で締めくくられている。
「・・・アンナプルナこそ、われわれの生涯の生きる宝なのだ。この実現によって、一ページがめくられ、新しい生涯がはじまる。人間の生活には、他のアンナプルナがある・・・・・・」

20歳代でこのフレーズに出会って以来、私は結婚式、送別会などことあるごとに何度もなんども挨拶の中で引用した。

そう言えばこれを引用する機会がすっかり絶えて久しいな・・・。

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