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「氷壁を越えて」展会場へ

2014年8月1日

7月26日、徳本峠から上高地へ下りてきて、このたびの大きな目的である「氷壁を越えて」展の会場「上高地インフォーメーションセンター」に向かいました。

6月5日付けで、このさややかなブログで『氷壁・ナイロンザイル事件の真実』についての拙い所感をアップしました。
私としては全く予期せぬ反応が著者の石岡繁雄さんのご関係の方からあり、実は「冷汗三斗」の思いをしました。
石岡さんの意志の力が行間から伝わってくるものに打たれて読んだものとはいえ、表層をなぞっただけの薄っぺらなものだけに、馬脚が現れたものと覚悟したのですが、分に過ぎる好意的な感想をいただきました

この事件に関して私の立っている位置など、観客席から見ている傍観者のものでしかないのですが、その立場としては精一杯のこととして、この催しの会場へは是非足を運ばなければならない、と思っていたのです。

2014_6_41

Dscn3183 展示会場
ここに展示されているものは1955年1月2日、前穂高東壁の上部で発生した墜死事故が、いわゆる「ナイロンザイル事件」の発端になってからの、壮絶な歴史が凝縮されているのでしょう。
ほんの行きずりに関心を寄せただけの私などが、何事かを語るなど不遜の極みであります。

Dscn3179 ここには”なぜ山に登るのか?”と問われた石岡さんが「登山はタート(行)である」と答えたことが書かれています。
求道者としての精神を持っている石岡さんらしい答えですね。

Dscn3175 ザイルの切断で墜死した若山五朗さん ~まだ22歳の若さでした。

Img309 『氷壁画集』生沢 朗 より

Dscn3182 「石岡さんはアルピニストであると共に、志を持った数少ない登山家の一人である」と書かれている。
これは井上靖氏が、石岡さんの著書『屏風岩登攀記』の刊行に寄せた献辞であります。

Dscn3180 繁雄さんの次女・石岡あづみさん ~最近の「NITE」における切断実験で用いたザイルを手にされて・・・
この実験でも改めてナイロンザイルの欠陥が実証されたそうです。が、ここまで長いことその脆弱性と危険を世に啓蒙してきたにもかかわらず、依然としてその認識に欠けているクライマーが跡を絶たないらしいのです。
その意味では「ナイロンザイル事件」はまだ終わっていない、といえるのでしょう。

あづみさんの取次ぎで「石岡繁雄の志を伝える会」会長の相田武男さんと電話でお話することもできました。
思いがけない成り行きでヘドモドしてしまい、なにやら分けの分からない会話になってしまったことだろうと思います。

改めて触れる必要もないのですが、井上靖の『氷壁』は「ナイロンザイル事件」が主題です。
主人公の魚津恭太はこの事件が発生した時の3人パーティーの
リーダー・石原 国利さんがモデルとされています。
~同時に、カタカナ交じりの遺書や、上高地で婚約者と落ち合う設定などは、稀代のアルピニスト
松涛 明がモデルになっていると思われるところもあります。
井上 靖には、これも高名な岳人・加藤 泰安氏をモデルにした『あしたくる人』という作品もあります。

井上さんがいまだに健筆を振るわれる立場におられたら、きっと鉄の意志を貫いた石岡 繁雄さんを題材にした作品を著わされたに違いない、と確信し、それだけにその望みは永遠に叶えられないことが返す返すも心残りです。

バスの時間に追われ、慌しく会場を後にしてしまいましたが、この展示会は何かのついでに立ち寄る、ということではなく、これ自体を目的に訪れるべきであったと、車中で反省しました。

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コメント

良い展示会をご覧になられました。
井上靖の原作をリアルタイムで読んだ私としましても
興味ある展示会です。
期限ある催しが残念ですね。

投稿: おキヨ | 2014年8月 1日 (金) 13時04分

おキヨ様
展示物には、ザイルの切断実験データなど、難しい数式などもあので、全てを理解することはできません。
石岡繁雄さんとく意志の塊のような人を中心にした男たちの強い絆の物語の展示会でしたね。
もっともっと知られてよいことですが、時間の経過の中で風化していってしまうのでしょうか。
今のうちに小説化され、映像化されたらと切望しているのですが・・・。

投稿: 風花爺さん | 2014年8月 1日 (金) 15時19分

風花さん 、こんにちは

待望の展示会に行く事が出来て良かったですね。更にブログを通じて、情報交換や思いがけない出会い等、貴重な体験をされ遠くまで足を運んだ甲斐がありました。国立公園に指定されて80年も経つ事にも驚きです。

投稿: 岳 | 2014年8月 1日 (金) 15時56分

岳様
この展示会が訴える内容の重量感に比して、私はあまりに不勉強でした。
もっと勉強していれば、持ち帰れるものももっと多くなったことだろうと思います。
それにしても、涸沢がどんな風に変わっているのか、或いは変わっていないのか、自分の目で確かめてみたいですね。
夢だけは持っていましょう。

投稿: 風花爺さん | 2014年8月 1日 (金) 20時14分

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