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『黒部の山賊』 ~幻の山書復刊

2014年6月12日

北ア・三俣山荘の主・伊藤正一さんが著した『黒部の山賊』は幻の山書とされていたが、このほど復刊した。

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そのトークショーが15日、八重洲のブックセンターで開かれるので、参加を申し込んだところ、意外や意外、既に満席だと・・・。
あまり今日的ではない催し思っていて、さほどの反応はあるまいとの油断とレスポンスの悪さに腹を立てている。
これで「春を背負って」を観に行く時間ができたとはいうものの、映画はいつでも観られるのに、千載一遇の機会を逃してしまい、とても喜んでなどいられない。

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『黒部の山賊』は昭和20年代の三俣蓮華小屋周辺、つまり人煙をはるか離れた天空におけるできごとを綴ったものである。
「山賊」という言葉にはどこかユーモラスなニュアンスが感じられる。
実際に、この書で描かれる、戦後の混乱期に黒部谷源流地帯を我がもの顔で闊歩していた男たちには、痛快で浮世離れした面白さがある。
世の男たちは、心の片隅にこうした生き方に憧憬するものを抱えているのではなかろうか。

Img100 三俣山荘周辺図

三俣山荘(もとは三俣蓮華小屋)はひところ毀誉褒貶(きよほうへん)が激しかった。
それだけにお騒がせな出来事に事欠かない。

その最たるものが小屋が建つ土地の時代を巡っての林野庁との係争である。
ことは1984年1月、林野庁からの通達に端を発する。
林野庁から土地を借りて営業している山小屋、旅館などに対して、時代をこれまでの「定額方式」から「収益方式」に変える、という内容である。
この決定に対し伊藤は、法律違反の疑いがある」として、他の山小屋との歩調合わせができずに「たった一人のたたかい」に入る。
2年後、伊藤は営林署より「山小屋の使用不許可と撤去命令」を通告される。
1991年2月、伊藤は処分の取り消しを求めて地裁に提訴。
1992年11月「三俣山荘撤去命令を撤回させる会」の第一回総会。

Img099 これは同会が1995年に発刊したものである。

事案は最高裁にまで持ち込まれる裁判になったが、2004年12月7日の最高裁への上告棄却ということで決着がついた。
伊藤は継続使用では勝訴、地代については敗訴(収益方式による地代を支払う)という結果であった。

発端から20年が経っていたが、もともと伊藤は「裁判において最終決定がでたら、それに従う」としていたのでサバサバと受容した。

黒部の山賊たちと濃密な交じりをしたり、伊藤新道を開削したり、波乱万丈の山暮らしを続け、91歳の今なお矍鑠としている北アルプスの名物オヤジの、謦咳(けいがい)に触れる機会を逸したのは、返す返すも残念である。

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コメント

風花さん 、こんばんは

奥が深いですね。黒部の山賊について、内容は聞いた事があります。南アルプス同様、裏銀座は地元に居るサラリーマンにも中々馴染めない奥地です。しかしそれだからこそ魅力もあり、未だ諦めずチャンスを狙っています。内容を調べ、本は早速注文しました。楽しみです。

投稿: | 2014年6月14日 (土) 21時02分

岳様
そうなんですよね。
三俣山荘周辺は今でも普通は途中一泊しないと行けない、北アでも一番奥深い山域ですから、なかなかヒョイとは足を向けることができませんね。
戦後の混乱期では警察の取り締まりの及ぶ範囲ではなく、山賊たちの自由な世界があったのでしょう。
その破天荒さが面白いと思います。
今ではもう神話みたいなものでしょうが・・・。

投稿: 風花爺さん | 2014年6月15日 (日) 06時40分

こんにちは。私も早速「黒部の山賊」購入してしまいました。91歳でまだまだお元気、意欲満々で「伊藤新道」を復興させたい、と、書いておられましたね。最後の「黒部源流よ、山よ、永遠なれ。」が心に響きます。「雲の平」憧れの未踏の地です。

投稿: 会員ナンバー70 | 2014年6月15日 (日) 12時00分

会員ナンバー70様
それはそれは散財かけてしまいましたね。
コストパフォーマンスが良かった!と言って貰える読後感が得られたら、と願っています。
昔、雲の平など女子供の行くところ、などど見下していましたが、今や女子供にも劣る脚力に低下してしまい、雲の平は雲の上になってしまいました。
トホホ・・・。

投稿: 風花爺さん | 2014年6月15日 (日) 17時53分

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