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映画「K2 初登頂の真実」を観て

2014年5月19日

先日の山歩きで痛めた膝のため「麗しき五月」なのに、しばらく山行は自重しなければならない。
そうなると時間にゆとりが生まれるので、これ幸いとビッコを引きながら有楽町まで出かけ、予定はしていた映画「K2初登頂の真実」を観た。

映画「トロイのヘレン」を演じたロッサナ・ポデスタ(イタリア)とグレース・ケリーのどちらが美しいか?と問われたとしたら・・・私にとってはとてつもない難問であり、答えに窮してしまうだろう。

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そのポデスタが『グラッチア』という女性誌のインタビューで「離れ小島で一生暮らさなくてはならなくなったら、誰と一緒にいたいか?」と問われ「ワルテル・ボナッティ」と答えた。
登山の世界でこそスーパースターであっても、芸能界とは無縁だったボナッティはこの話を友人から聞いてとても驚くが、逢ってみたら互いにフィーリングが合い生涯添い遂げた。

そんな、男の風上にも置けないような果報者のボナッティだが、卓越した登山家であるがゆえの栄光と、嫉妬による中傷で50年にもわたる辛酸の狭間で翻弄されることとなる。

映画「K2 初登頂の真実」はそのボナッティが23歳の時、選ばれて参加したK2遠征隊で、初登頂をサポートして成功させたのにもかかわらず、帰国後いわれなき中傷を浴びることとなり、半世紀をかけてその汚名を雪(すす)ぐための闘いをすることとなり、その壮絶な物語である、と見るまではテッキリ思い込んでいた。

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高さこそエベレストに一歩を譲るが、登攀の困難さにおいては世界一とされるK2(ケイトゥ)8616mがA・デジオ隊長率いるイタリア隊についに山頂を明け渡したのは1954年7月31日の午後6時であった。

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登頂隊員はアキッレ・コンパニョーニ(40歳)とリーノ・ラチェデッリ(29歳)の二人ということは、登頂のズーッと後に公表された。
帰国後、この二人は「ボナッティは自分が登頂したいがため、酸素を使ってしまい、自分たちは途中から酸素なしで頂上に達した」と報告し、それがそのまま公式報告となった。

事実に反するとしてボナッティは抗議をするがイタリア山岳会に容れらることなく、止むをえず提訴し、その後汚名を雪(すす)ぐために50年にわたる長く孤独な闘いを余儀なくされることとなる。

真実が明らかになるきっかけは1986年、登山とは無縁の外科医・ロバート・マーシャルが記録や写真を詳細に分析して、登頂者二人の報告に嘘があることを突き止めた。

2004年になってラチェデッリが(~おそらく良心の呵責で~)、ボナッティの主張に沿う見解を発表し、2007年ついにイタリア山岳会も公式報告書の誤りを認め、ボナッティの名誉は回復された。

登頂隊員二人が嘘の報告をした動機は、自分たちより後輩なのに実力が高く、ガイド出身のボナッティに初登頂の栄誉を奪われることを阻止しなければならないという危機感からであった。

この映画は正しく改められた公式報告に基づいて創られたものであるが、それによるとその策略は登攀リーダーであったコンパニョーニが企てたものであるとされた。

登山の世界は無償の崇高な行為と、山男たちの友情という美しい物語にされ勝ちであるだが、実態は嫉妬の渦巻く世俗がそのまま自然の中に持ち込まれていることを実証している。

さて、肝腎の映画の出来栄えであるが、私には残念ながら凡作としか映らなかった。
これだけの偉業を題材にしているのに、眼頭が熱くなるようなシーンはただの一度もなかった。
K2初登頂のような大スケールの物語を2~3時間の映画にまとめることにそもそも無理がある。
その上に前半で意味のない若者たちの恋遊びなどに貴重な時間を無駄遣いしている。
キャスティングにも大きな?がついた。
イタリアが国家を挙げて挑むK2だから選りすぐりのアルピニストを選抜しているのに、役者が誰もナンパの方が似合うイタリア男の典型揃い。

ただ一人、イタリア山岳会の「神様」リカルド・カシン役がそれらしかったが、惜しいかな心臓に疾患があることが分かり、この遠征隊を率いることができなくなり途中退場してしまう。
さらにこの映画の致命的な問題は、K2の物語はボナッティの名誉回復が実現した時に完結するものであるのにもかかわらず、肝心のその部分はたった数秒の字幕だけで済まされていたことである。
肩透かしを食ったような、後味の悪さであった。

ボナッティはK2の後、ガッシャブルムⅣ峰の登頂を果たし、単独でのマッターホルン冬季初登攀を成功させ、世界屈指の登山家としての盛名を確立したが、突如35歳の若さで登山界から身を引き、垂直の冒険から水平のアドベンチャーへ転進し、2011年9月13日に81歳の生涯を閉じた。
愛妻・ポデスタも2013年12月10日、ローマで79歳で没。
・・・・・・合掌

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コメント

以前にもちらと美人女優ロッサノ・ポデスタと登山家のエピソードをお書きになったことがありましたが、すっかり忘れていました。
かのロッサノ・ポデスタが地道な結婚生活を通したんですね。ある意味これは素晴らしいことです。そして昨年79歳で生涯を閉じた。。。
あ、ポデスタの話ではなく、映画〔K2 初登頂の真実〕の話しでしたね^^

大いに期待された映画だったのにそれは残念でした。
しかし、そうときけば、その期待外れの部分もまたみて見たいという心理が働きますね。


投稿: おキヨ | 2014年5月20日 (火) 12時34分

風花さん 、こんばんは

春先からハードな山行、私は週一ですが春先は筋肉痛と併せて、あちこち違和感があります。しかし10回とは凄いです。期待を持たせそうなタイトルでしたが残念でしたね。脚本?やはり監督でしょうか?

投稿: | 2014年5月20日 (火) 17時45分

おキヨ様
ポデスタとボナッティのことは、確かボナッティが死去したた時にブログにしています。
二番煎じですね。
登山の映画はリアリティに欠けるという宿命から逃れることが難しくて、興ざめしてしまいがちです。
そこは所詮映画なんだから、割り切っているつもりですが、その程度がひどいとさすがに不満が勝ってしまいます。
この映画の場合、部分というより全体に不出来だと感じます。
ネットで幾つか鑑賞後感を見ましたが、私と同じような感想が多いので、あながち私の偏見でもなさそうです。

投稿: 風花爺さん | 2014年5月21日 (水) 06時30分

岳様
私の場合、数こそ多いかもしれませんが、ハイキングに類するものばかりですから、中身はお粗末そのものです。
ただ、そのお蔭で足の筋肉は知らずしらずの間に鍛えられているようで、筋肉痛が起こるようなことはよほどハードな山行でない限りありません。
どこまで続けられるやら、ですが・・・
映画は良く「綜合芸術」という言われ方がしますね。
脚本、演出、撮影、キャスト、衣装、音楽などどれも大事なんでしょうが、シナリオの出来栄えはとりわけ重要なのではないでしょうか。
ところで「春を背負って」の公開まで残り1ヶ月を切りました。
楽しみですね。

投稿: 風花爺さん | 2014年5月21日 (水) 06時43分

映画の感想、全く同感です
ですがこの映画、もともとはテレビ映画として前後編に分けて放送されたものを上映化に当たって大幅に時間を削って再編集されたようです
テレビ映画の最後は少年がカシンに引き取られるところで終わっています
youtubeに上がっているので参考までに
https://www.youtube.com/watch?v=ccal4rY0mLk

投稿: 通りすがり | 2014年5月27日 (火) 17時30分

通りすがり様
貴重な情報をありがとうございました。
そういうことだったのですか。
道理で荒っぽいストーリになっているのですね。
合点がいきました。
カシンも先年亡くなりましたが、引き取られた少年はどうなったのでしょうか。
アルピニストとして育ったのでしょうか。

投稿: 風花爺さん | 2014年5月27日 (火) 19時51分

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