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標高数値に翻弄された「剱岳」

2014年3月28日

昨日、南アルプス展望の感動を共有したいと13人の仲間で「愛鷹・越前岳」を歩いたが、終始雨模様の曇天で、一瞬の出会いもないままに終わった。
天気のことは誰もその責めを負えないことではあるが、そうとは思いながらも皆に悪いことをしてしまったな、という思いがつきまとって離れない。
今日が晴天になっただけに”たった一日違いで・・・”と自分をさいなむ気持ちが募ってしまう。

ところで身長とは、伸びるものではあっても縮むものではないと思い込んでいた。
大分以前、健康診断で身長の数値が減ったことを知ったときも、単なる測定誤差だろうと受け止めていた。
それが、誤差の値が大きくなるにつれ、どうやら計測上のことではないことを思い知るに至った。
私のように身長が平均値以下の者にとっては貴重な数値がさらに減るなんて、けっこう応えることである。
加齢により軟骨が擦り減り、椎間板の厚みが減ることが原因らしい。

おりしも27日の朝刊各紙で紹介されたのが、87の山で標高が1m高く、もしくは低くなったというものである。
山も伸び縮みする?
いかに何でもそれはなく、測量の精度による修正である。
この中でやはり山好きの関心を呼んだのは南アの「間ノ岳」であろう。
これまで3189mでたった1mという僅差で日本第4位であったが、新標高3190mは奥穂高岳と肩を並べる3位タイとなる。
ヒマラヤやアルプスなどと比べたらドングリの背比べで笑止千万なことだが、いざ山好きとなると、これがなかなかシビアなことになるのである。

山の標高の話となるとやはり「剣(正しくは剱)岳」の標高の数奇な変遷に思いが至る。
映画「点ノ記」となった1907年の剣岳における最初の測量の成果として標高が2998mと算定された。
それが1930年の測量で3003mとされ、堂々と3千m峰の仲間入りし、40年の間その地位にあった。
なのに、1970年の空中写真を使った測量ではなんと2998mに下方修正されてしまい、その後長いこと剣岳の標高となっていた。
剣岳登頂100年に当たる2004年、記念事業として山頂に三角点標識を設置しようというミッションが決まり、63kgの標石が山頂の一角に設置された。
この位置の標高が非情にも2997mとされた。
三角点から13m離れたところ、祠の立つ岩の累積がさらに1・5m高いところから、剣の標高は最終的に2998・6と確定した。
多くの登山愛好家の祈るような願いも空しく、3千m峰への復活はならなかったのである。
たった1・4m・・・これくらいのことなら辺りにいくらでもある岩を積み上げてキリよく3千mにする、それくらいの粋な計らいは許されないものだろうか・・・

それにしても100年以上も前の、未成熟であったであろう時代の測量値と、最新のデジタル技術を駆使しての側量結果とが殆ど違わないことに驚く。

Img303 あと2m、どうにかなりませんか? ~山と渓谷 2004年7月号

Img084 剣御前からの剣岳

Img082 1907年柴崎芳太郎一行の側量隊

Img083 柴崎の名前が入っている「点ノ記」

Img081 一般登山者に試練を課す「カニのタテバイ」

Img085 祠が建つ剣岳の最高点
私がここに立てば私の頭は3千mを越える。
そして私はかつてそこに立ったことがあるのだ。

しかし、ここに縷々書き連ねた些細な数字の違いが一体なんだというのだろうか。
そんなことは「雄姿」と云う言葉が一番似合う剣岳の雄雄しい姿をいささかも貶めることにはならない小さな、小さなことでしかない。

 

 

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コメント

風花さん 、こんばんは

つい先日、穂高岳の標高云々をお話ししたばかりなのに、突然この様なニュースには驚きと、不思議な感赫を抱きました。こんなニュースにも一喜一憂する人はいるのでしょうね…

投稿: | 2014年3月28日 (金) 20時29分

岳様
「たかが標高、されど標高」で、一般の人にはどうでも良さそうに思える僅か数メートルの違いが、ある種の人(地図に係わる人、山小屋、地図マニア、三角点マニアetc・・・)たちには、重大な関心事になりますね。
この度の発表でも悲喜が至るところで交錯したのではないでしょうか。
これは高さがせいぜい3千m台で、たとえは悪いのですが「ドングリの背比べ」の感が否定できない日本での、かなり特殊な現象ではないかと思います。
身長が低いほど1cm、2cmが大きな意味を持つのと共通していませんか?
私のことですが・・・

投稿: 風花爺さん | 2014年3月29日 (土) 06時31分

私もニュースで知り驚きました。
変な言い方かもしれませんが、正確さ一本やりの身もふたもない測量ですね。
山の高さはこれからも微妙な変化をするということになるかもしれませんね。
好みの山が測量結果で低くなるのは複雑な心境になるでしょうね。

投稿: おキヨ | 2014年3月29日 (土) 12時02分

おキヨ様
一般的な人から見たらけっこうマンガチックで笑えるのではないでしょうか。
マニアが寄ってたかって重箱の隅をほじくりかえしている図ですね。
国土地理院などの立場からすれば「科学する」行為なので、厳密にコンマ以下の数値にまでこだわるのは当然なのでっしょう。
今はGPSによる側量なので精度は一段と向上しているのですが、それでも100%正しい結果は得られないのです。
例えば山頂が樹木で覆われている場合などは、その分修正するのですが、樹木は成長したり、あるいは枯れてしまったりの変化をしますから、静止状態での数値というのは厳密には得られないことがあります。
標高の変動より、それによって生まれる人間模様のほうが興味深いですね。

投稿: 風花爺さん | 2014年3月29日 (土) 14時37分

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