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名曲を読む愉しみ

2014年1月9日

多くの勤めに人にとってこの年末年始は9連休になったそうだ。
一年のほとんどを時間の制約の中で送っている人にとって、この休息は貴重であることは私にも実感できる。
始まりではけっこうありそうだった休日も瞬くまに過ぎて、再び働き蜂の一員として職場に戻る、あの切なさたるや・・・
そんな思いとは無縁になっている今のこの幸福感はなにものにも代えがたい。

さて音楽は「聴く」もので「読む」ものではない、などと当たりまえのことを今さら何で・・・?
実は音楽鑑賞には登山と共通するものがあるということ。
山に登る、名曲を聴くという本質的な行為に「読む・書く」という、というものがほとんど不可分的に随伴している点である。
クラシック音楽については読むことは、その曲への理解の上で大いに有用であり、また批評の対象としてどのように評価されているのか、好きだ嫌いだと誰がどのように感じているのか、などなど「読む」ことの愉しみがおおきい。

という次第で今並行読みしている幾つかの音楽図書を紹介しておきたい。

『私の好きな曲』(ちくま文庫)は日本における最高の知性の一人である吉田秀和が1977年に著したもの。
小林秀男とならぶ難解な文章家であった著者の本としては、高度な比喩は多用されているものの、私などでもおおむね理解出来るレベルにある。

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ベートーヴェンの第九やブラームスのヴァイオリン協奏曲など通俗的な名曲もある一方で、私には敷居の高いバルトークやヤナーチェク、ベルクなどの作品も含まれ、いかにも音楽批評の巨人らしい幅広い内容である。

対比的なこちらは、先日書いたばかりの『永遠の0』の著者・百田尚樹さんの至高の音楽』(PHP研究所)
昨年末には書店の店頭に平積みされているのをみて、直ぐに手が出そうになったが、新年になってから一番に買う本として残しておいた。
欲しいものをあえて残しておくなんて、我ながらどこか子供っぽい。

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学生時代から途切れることなくクラシックを聴き続け、2万枚以上のレコードとCDを所有しているという、並の愛好家の域を突き抜けている。
音楽の評論家ではない一介の音楽偏愛者が、愛して止まない音楽について語れることが嬉しくて仕方ない、という思いが行間から伝わってくる。
選曲もオーソドックスで、曲の紹介文も分かりやすく入門者向けであろう。
巻末で『永遠の0』の終章を執筆中ではマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲をエンドレス再生しながら綴った」と執筆活動の一端を披露している。
ラストシーンとは大石と松之が結ばれるまでのことか、宮部久蔵の最後の場面なのか、明らかではないが、いずれにしても甘くて切ないこのあまりにポピュラーな一曲は、私には「永遠の0」全体の印象とは少し異なる。

ところでこの本を書店で求めて帰宅し、開いたときおかしなことに気づいた。
見返しの紙が破れているのである。
新刊本でこんなことがあるのだろうか?と思っただけで、さして気にも留めなかったが、読んでいるうちに思い当たった。
この本には名曲のダイジェスト版CDが付録についているのだが、誰かがそのCDだけを剥ぎとっていた、その痕跡だったのだ。
おまけのしろものだから別にそれが欲しいとは思わないから、書店に交換を申し出る気などさらさら湧かなかったが、それをした人の心根を思うと切ないものがよぎった。
たかだか1800円ほどの本、と思うのはこちらだけで、それすらの本も買えないので心ならずもこのような振る舞いに及んだのか、単なるいたずら半分の出来心なのか、小さなことだがここにも人間模様が描かれているようである。

次は昨年生誕200年を迎えていたワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の物語にかかわる『トリスタン伝説とワーグナー』平凡社新書)

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ライトモティーフやら無限旋律やらでワーグナーの楽劇はハードルが高い。
とりわけケルト伝説を中世の宮廷詩人たちが語り伝えた、この「至高の愛」の物語は難解である。
原作の一つである岩波文庫版の『トリスタンとイズー物語』をついに読み通せないままになっている。

BDに録画してあるワーグナーの作品は未だ観ていない。
この難敵に立ち向かうためには十分な準備をしてかからなければなるまいと心しているためである。

・・・などとやや肩に力が入っているご様子ですが、音楽なんてもっと気楽に楽しめばいいものでしょう、違いますか?風花爺さんさん。

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