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ゼロからスタートし、「0」で終わった一年

2013年12月30日

映画「永遠の0」の中ごろで、特攻で死んだ顔を知らない祖父の像を求める孫が、友人たちとの合コンのシーンでの会話・・・
近況報告として、特攻(海軍特別攻撃隊)のことを調べていると話すと、友人たちが口々に「特攻と自爆テロは同じようなもの」とか、女性の参加者は「そんな話をしに集まっているわけではない」と非難する。
私たち世代以下での特攻に対する最大公約数的認識はそんなところだろう。

特攻についてはフィクション、ノンフィクションのどちらでも多くの著書があるが、今時の話題作としては超ベストセラーの『永遠の0』で、それが「三丁目の夕日」で昭和のノスタルジーを描いた山崎貴のメガフォンで映画化された。
その封切は待ち遠しく、21日全国公開され、その翌日駆け付けた。
原作と映画の消化に時間がかかり(それでも消化しきれていないが・・・)、かつ特攻のにわか勉強をしていたためにアップするのが年末になってしまった。

346152view001 主人公・宮部久蔵を演じるのは岡田准一。
新年から始まる大河ドラマ「黒田官兵衛」も演じる、今旬な役者、ということだろうか。

346152view003

百田尚樹の原作は350万部が売れたベストセラー
この作品は読み進めていくと、真珠湾の奇襲からの開戦から、緒戦の怒涛の進軍が、僅か半年で「ミッドウエー会戦」での敗北で反転し、各地での相次ぐ敗退、玉砕で次第に追い詰められ、沖縄戦での悲惨な末期などの過程が自然に学べるストーリーとなっている。

Img048
この物語、宮部久蔵が特別なのではない。
これは4400人の特攻死の一つでしかない。
もっと言えば260万人の将兵が死んだあの戦争の中のたった一つの話でしかない。

元兵士が語る形を借りた小説だから史実に忠実とはいえないこともあるだろう。
そもそもあの戦争の史実といったところで、真実は十分には解明されていないのである。
真実を知る上級将校は戦死したり、生還した者は口をつぐんだり、あるいは記憶違いがあったりなど、もろもろの要因で「真実」の正体が曖昧なものとなっている。

Img049 この書は、たまたま太平洋戦争時代を舞台にして、今年公開された映画「風立ちぬ」「永遠の0」および「終戦のエンペラー」の三作を、小説「永遠の0」を横串にして、太平洋戦争と特攻作戦を考察している。
「風立ちぬ」については「0戦」の物語なのに、あの戦争とは正面から向き合っていない、という論調であるが、この点には異論はない。
特攻作戦を肯定的に捉え、特攻をやや美化している節はあるから、距離を置いて読むべきかもしれないが、示唆を受けることも多い。、

冒頭に書いた合コンの会話にもある通り「十死零生」の特攻を志願するなど狂気の沙汰で、それこそ犬死とする見方は多い。
しかしあの狂気の時代、本心では志願したくなくても、志願しないという選択肢は与えられていなかったのである。
むしろ狂気だったのは、特攻作戦が全く無意味になってもなお、人命を紙よりも軽んじて作戦を継続した命令する側がそうだったのである。
その意味では日本を背負って立つべき多くの有為な若者たちが、犬死を強いられたことは痛恨の極みである。

軍・民合わせて310万人が死んだあの戦争もほとんど忘れられ、今は何ごともなかったような平穏な日々が過ぎている。
そんな状況なのに私が意外に感じたのが観客のほとんどが若い世代であったこと。
愚かしい特攻作戦で散った主人公・26歳の宮部と同じくらいの世代に思えた。
彼らはこの映画から何を感じとったのだろうか。

特定秘密法の成立やら、安倍首相の靖国参拝による国際的な孤立化、集団的自衛権の行使容認?、憲法改正・・・・・・。
いつかきた道への回帰が密かに進行しているのだろうか?

映画は原作を超えられない、という持論の私ではあるが、感動に充ちた原作を毀損することなく例外的に映像化に成功した映画と思う。

タイトルこそ「ゼロ」ではあるが、内容には無限の奥行きがあり、深く考えされられる名作2編に出会えた年末である。
同時に自分がいかにあの戦争~開戦の経緯、緒戦での大勝が逆転しついに特攻作戦にまで追い詰められた戦局、終戦の遅れ、靖国問題など~について不勉強であったかを悟らされた年末でもあった。
それは怠惰な私を叱咤するために、新年への課題として突きつけられたものであるかもしれない。

時の流れは奔流のごとしで、明日は大晦日。
ブログのアップもこれが今年最後となります。
このブログにお付き合いいただいた皆さまにお礼申し上げ、お健やかに、清々しく新年をお迎えになられますようお祈り申し上げます。

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コメント

今売れに売れている作家とその作品の映画化ですね。

人間というのは狂気を含んだ存在と、世界の戦争歴史をわずかながらですが知ることで思うのです。やむに已まれない狂気。。。それは闘いの本能に抗うことのできない男性のなせることで、女性はその本能ともいえる深部をどう説明されても深く理解できないのではないかと私には思えます。

年明けにこの映画を観たいと思います。できれば本も。。。

投稿: おキヨ | 2013年12月30日 (月) 12時02分

おキヨ様
人には誰でも心の闇の中に狂気が潜んでいるのでしょうか?
正気でいるときは自分の狂気には全く気付くこともなく、時には正気を失うような事態にあっても、なんとか理性で抑え込み、普通はそれで人生を全うできるのでしょう。
それだけに、東条英機やヒトラーが行った、人の命を虫けらほどにも思わない、あの振る舞いはどうにも説明ができないことです。
一人の狂気が360万人の日本人と、数えきれないほどの外国人の命を奪ったのですからそのおぞましさは言葉に尽くせるものではありません。

「永遠の0」は原作も映画も、水準をはるかに超えた秀作だと思います。
私は出会えたことを実に嬉しく思っています。

投稿: 風花爺さん | 2013年12月30日 (月) 17時34分

今年も様々な自然の風景を楽しませていただきありがとうございました。

それではよいお年をお迎えください。

投稿: おキヨ | 2013年12月31日 (火) 10時49分

風花さん 、こんにちは

この映画の原作について知り得た事で、これは是非観たいと思っています。私の父も満州など戦場に行っていました。土蔵の中から出てくる短剣などを持ち出し、玩具として遊んだ事もありました。今日はこのブログを何回も読み返し、凄く感銘しました。ありがとうございます。良いお年をお迎え下さい。

投稿: | 2013年12月31日 (火) 12時42分

風花さま~ こんにちは。

早や2013年も今日で何事もなく過ぎ去ろうとしています。

文面を拝見していろいろと考えさせられました。
あの忌まわしき戦争から67年近くの歳月が流れ、過去の出来事のよう
遠くに葬り去ろうとしている~ そんな風に感じられるこの頃です。

今の平和があるのも310万人の尊き犠牲の上に成り立っているのかと思えば
当時の時代の流れに逆らえず止むにやまれぬ翻弄された人々の苦悩
愛する家族や友人との理不尽な別れなど、痛みが伝わっくるかのようです。

誰にも邪魔されず好きな山登りに精出せる今の自分は
ホント幸せなことです。

今年も山紀行と含蓄ある文章に大いに楽しませていただき有難うございました。

どうぞ良いお年をお迎え下さい。

投稿: かおり | 2013年12月31日 (火) 13時41分

おキヨ様
私の行動範囲内での風景写真ですからプロが摂るもののようなわけにはいきません。
いくばくかのことでもお伝えできれば幸いです。来年がおキヨさんにとってさらに良い年になりますよう・・・・・・。

投稿: 風花爺さん | 2013年12月31日 (火) 15時20分

岳様
私は軍国少年でしたから次世代の方とは太平洋戦争への思いこみに違いがあると思います。
それだけにあの戦争から生まれる数々の出来事~それも
多くは悲しいことですが~から生まれる小説や映画には批判の目をもてないままに、過剰に反応してしまいます。
ブログの限られた紙数(いや文字数ですね・・・)ではそれを伝えきれません。
いや、私の表現力では伝えきれない、と言った方が正確ですが・・・。
それはそれとして、来年も岳さんの鹿島槍の定点観測などを楽しませていただきます。
良い年になりますよう・・・。

投稿: 風花爺さん | 2013年12月31日 (火) 15時38分

かおり様
戦後70年近く私たちが平穏に暮らせてきたのは、国内外にわたるそれこそ正視できないくらい多くの人命との引き換えだと思うと胸が痛みます。
今は誰もがこの平和を享受できているのですが、かおりさんがおっしゃるように、山歩きなどを楽しめるのもそのお蔭で、時には思いを致さなくてはならないと感じます。
その意味で、首相の靖国参拝は理のあることでしょうが、A級戦犯が合祀されたことから、事態をいちじるしく難しいことにしてしまいましたね。
あの戦争ではまた、多くの岳人が山への愛着を絶たれて帰らぬ人となっています。
私はこれから、時にはその思いを持って山歩きをしてみようと思っているところです。
サラチャンとの山歩きがますます豊かなものになりますよう・・・。

投稿: 風花爺さん | 2013年12月31日 (火) 15時56分

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