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大平牧場から木賊ノ頭

2013年11月22日

そうか、あれから丁度50年たつのか!
あの日、あの時、私は霧ケ峰経由で蓼科山に登るため、新宿からの夜行列車に乗り、夜明け前の上諏訪駅に下車していた。
その悲報は携えていたラジオから流れた。
それはジョン・F・ケネディ大統領が凶弾に倒れた、という衝撃的なニュースだった。
時は移り、奇しくもその長女が時期を同じくして駐日アメリカ大使として着任した。

山梨県と長野県の県境になる奥秩父の長大な山並みが西走し、瑞牆山(みずがきやま)を最後の頂として、信州峠で一旦尽き、さらに西へ向け「横尾山」をもたげて小海線沿線の「飯盛山までつらなる尾根はあまり人が入らないエリア。
そのほぼ中間にある「木賊(とくさ)ノ頭」1780mへ「大平牧場」から登るルートはさすがのネットでも見当たらない超マイナーコースである。
私は山岳ライター・打田鍈一さんが2009年12月号『山と渓谷』誌に書かれたものを見ていていつかは歩いてみようと思っていた。
久しぶりに道のない、道標の無い山を歩くこととなlる。

19日、まだ明けやらぬ東京の空は澄み切っていた。
それが、甲府盆地に入ると目的地から先は、寒気の吹き出しによるガスに厚く包まれている ~そりゃないだろう・・・

「標識がある」という大平牧場への入り口を探しているうちに、信州峠近く、瑞牆山の足元の黒森まで上がってしまった。

Dscn1994 不機嫌そうな瑞牆山 ~風花が舞っている・・・
標識は結局、牧場閉鎖に伴いは撤去されていたようである。
なんとか入り口を探し当て、狭いが路面状態の良い道を走り、牧場ゲート前に到着。

Dscn1995 この牧場は須玉町で経営していたものらしいが、今は閉鎖されている。
人の出入りには支障はない。

Static 今日のルート ~往復なのでゴールで記録を終了している。

Dscn1998 風花はいつのまにか消え、すっかり晴れ上がり、牧場に入ると右上に横尾山の草原が見える。

Dscn2000 振り返ると瑞牆(みずがき)山(左)と金峰山が見守っているかのよう。
木々はすっかり葉を落としてる。
若葉、青葉、そして紅葉と装ってきた、あるいは虚飾に堕していた樹木が潔く裸になる、その寒樹のたたずまいを私はとても好んでいる。

Dscn2002 横尾山(左端)と瑞牆山・金峰山
縦に長い牧場はどこを登ってもよいようだが、左端に轍があったのでこれを辿った。
この轍前方の緩い尾根の手前で尽きると、そこは左右から狭まる有刺鉄線が切れていて山に入れるようになっている。
どこには赤テープがついているので、恐らくこれが山へ向かうルートであろう。
樹林下の幅広い尾根は笹で覆われているが、かすかな踏み跡は拾える。
その笹藪の中で不思議なものを見つけた。
丸太を三本針金で束ね、それを縦位置に置き、丸太杭で支えている。
すっかり苔むしているこの人口物はいったい何だろう。
さっき通り抜けた牧場と何かの関係があるのだろうか?
それともかつてここには登山のためのコースがあったのだろうか?
いずれにしてもこのような人の手にかかったものがあると、安心感がわく。
ほどなく尾根は直角に右(東)へ折れ、登ると大きな岩に当たる。
直進は難しそうで、仔細に観察すると、岩の左下を巻いて、ほんの微かに人が歩いている痕跡らしきものが続いているように感じられる。
とにかくそれを辿って斜上していくと、前方の主稜線出た。

Dscn2003_2そこには今日見る最初の古びた標識が立っていた。
カンだけで辿ってきたがピンポイントで目的地に出られたこととなった。
道の無い山歩きの場合、この瞬間の達成感、安堵感がたまらない。

東へ進めば横尾山から信州峠となるが、大平牧場を示す方向は間違っているとしか思えない。
西へ向かう、清里駅までつながる長い山道は笹藪に覆われているというものの、ここまでに比べれば明瞭である。
ところどころで展望も開けている。

Dscn2004 これは北の方向になる「男山」(左)と「天狗山」 ~ただし天狗山はその背後に高い「御座山(おぐらさん)」と重なっていて判然としない。

Dscn2005 断る必要もないかな ~南八ヶ岳で赤岳は雪雲の中。
トーフ岩という四角い岩の左を通過すると、目的の「木賊ノ頭」の肩に着く。
灌木が茂る明るい草原状で、小さいながら気分のよい憩いの場所である。

Dscn2007 まず目を射るのは南ア

Dscn2011 富士も遠景の中におさまっている。
富士の手前のシルエットの尾根。
その右端が深田久弥終焉の地・茅ヶ岳のあたりで、見えている山は金ヶ岳になる。

Dscn2009 山頂 ~目立たないが右上の黒丸の枝に小さな山名標識がある。

Dscn2010 西の肩からもう一度八ヶ岳

Dscn2021_2 大平牧場に戻り、もう一度瑞牆山と金峰山

今日は展望に恵まれた山歩きができた。
それらはもう数えきれないほどに見慣れた景色だが、見飽きることがない ~そのことを再認識した一日であった。

帰りの道すがら瑞牆山荘から金山に寄り道し、久しぶりに、日本で登山が遊びの対象となった時期の偉大な先達・木暮理太郎の碑前にたった。

Dscn2024

Dscn2025  碑は、古くは金峰山の登山基地となっていた金山・有井館裏手の白樺の樹林のなかにひっそりと佇んでいる。
盟友・田部重治とともに、人跡もまれな東日本の山々を渉猟して歩いたそのパイオニア・スピリッツを知る人も減るばかりの今日である。

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コメント

50年前、ケネディー暗殺を知ったのは山手線の中、他人の号外新聞を見てショックを覚えたのを鮮烈に思い出します。こういうことからも月日の速さを思わずにはいられません。。。

不機嫌そうな山・・・云い得ていてちょっと笑いました^^

八ヶ岳・・・実は昨日八ヶ岳に行きたかったのですが、私の起床が遅かったので比較的近場の高山村にした次第です。。。

枯れ色の山々は春、秋と同じくらい私も好きですね。。。
つまり四季全部好きで、風花さんと同じだと思います。^^

投稿: おキヨ | 2013年11月24日 (日) 13時09分

おキヨ様
山にも表情があるのだ、と思えることがあります。
もちろん自然条件の変化が主たる要因でしょうが、時には見る側の心境が投影されることもあるのではないでしょうか。
それがあるからこそ自然景観がより素晴らしいものになり、見飽きることがないといえます。
日本には良いことがたくさんありますが、その最たるものが自然で、その中で暮らしていけるだけでも税金を払っても良い気にさせられます。
空気と同じように、だれでも享受できるものですから、生ある間に折角のセッセと楽しませていただきます。

投稿: 風花爺さん | 2013年11月24日 (日) 18時18分

風花さん 、こんばんは

黒斑山のルートと言い、これほどマイナーな山やルートを知りえる方初めてです。秩父や野辺山は歩いていますが、考えた事もありませんでした。目的を持って踏破する。男のロマンを感じます。

投稿: | 2013年11月24日 (日) 20時37分

岳さま
私もいささかヘソ曲りなところもあるので、ヘンテコリンな山歩きを好む傾向があります。
しかし、世の中には本文に書いた打田鍈一さんとか松浦隆康さんとか、私などよりはるかに上をいく、超マニアックなルート探しを実践している人が多くいます。
私はその後追いをしているだけで、自分のオリジナルルートはまだ持っていません。
以前には新ルート開発の野心もあったのですが、それも今は消滅してしまいました。

投稿: 風花爺さん | 2013年11月25日 (月) 06時47分

風花さま~ こんにちは!

素晴らしき山岳展望の数々のお写真を拝見して溜息が溢れます。
晩秋の狐色に染まる疎らな木々の草原前景に青き山肌
大平牧場から瑞牆山と金峰山眺望がお気に入りです。
瑞牆山と金峰山は登っているだけに走馬灯のよう、思い浮かび懐かしいです。

信州峠や横尾峠辺りの高嶺に少し登ると富士山をはじめ、南アルプス
八ヶ岳連峰など錚々たる山々の眺めが存分に楽しめるのは
羨ましい限りです。

関西とは山の規模やスケールが全く違いますね

投稿: かおり | 2013年11月26日 (火) 15時20分

かおり様
絢爛たる色彩の饗宴になる秋たけなわはもちろん素晴らしいですが、草原が狐色に枯れる晩秋の渋い風情もそれに劣らぬ日本の風景で、私は好きです。
串田孫一さんはこんな情景を「スコットランドの丘」と表現してみせました。
寒いのは本当のところ嬉しくないのですが、山の姿はこれからがいよいよ魅力に溢れるものになりますから、毎年のことですが、楽しみです。
行動半径の広いかおりさんなら、金峰や瑞牆山の山頂を踏まれているでしょう。
曾遊の山は、折りに触れては懐かしく思い出されます。
それが若い時代のことであれば「帰りこぬ青春」の感傷で、胸棟に溢れくるものがあります。

かおりさんのホームグランドの山々も間もなく、アルプスの景観に劣らない雪山姿に変身します。
かおりさんのカメラワークにますます磨きがかかることを楽しみにしています。

投稿: 風花爺さん | 2013年11月26日 (火) 17時23分

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