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ブルックナーはお好き?

2013年10月4日

財務省のみえみえの筋書通り、消費税律アップとなった。
税金や、社会保険料などの国民負担が増えるのはもちろん嬉しいことではない。
しかし、毎年1兆円ほど増えつづける社会保障費や、1千兆円を超える国の借金の財政再建を考えれば避けては通れない道なんだろう、とは思う。
いや、ほんとうに深刻なことはこの程度の負担増ではでは焼け石に水にしかならないことであり、さらなる増税も不可避なことである。

もし、消費税アップをしなければ国際社会から財政再建の意思なし、と見られ日本(国債)売りとなり、金利が上昇したらもっと悲劇的な状態になる・・・というのはあながち財政当局のプロバガンダとばかりに言えないリアリティがある。
とはいえ、アベノミクスは、デフレを脱却する前に、円安のため、ガソリン代、電気料金そのた多くの物価上昇を招き、多くの消費者に痛撃を与えることから幕をあげた。
円安の恩恵を受けた輸出企業が、増えた利益を社員にまで回すのには相当のタイムラグが出る。
物価上昇以前から、すでにここ数年毎年のように各種の社会保険料が上がりなどしているから、消費税増税は消費者に打ち込まれる「第三の矢」になりかねない。

カエルを水の中に入れ、すこしづつ熱を加えていくと、カエルは気づかないままにやがて釜茹で死してしまう・・・今そんな状況に似てきてはいまいか?

さて本題に入るとして『悲しみよこんにちは』の作者F・サガンは『ブラームスはお好き』という恋愛小説を残している。

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その顰(ひそみ)にならって私が”ブルックナーはお好き?”と問われたら・・・
~目下、好きになろうと努力中です、という返事になる。

以前、ウイーンの「シェーンブルンネン宮殿」を訪れた時、帰り際に広大な庭の一角に「アントン・ブルックナー」が一時住んでいたと書かれた小さな建物に気づいた。
もしその当時ブルックナーに今ほどの関心があったら、多少の感慨をもってその家の前で写真でも撮っていたであろう。

私の音楽的成長はかなり以前に止まったままらしい。
音楽史的にいうと後期ロマン派のブラームスまで、である。
その後に続くブルックナー、マーラー、ショスタコヴィッチ、ストラビンスキー、R・シュトラウスあたりになると、聴かないこともないが、積極的に聴こうという気にはなれないままである

印象にしかすぎないのだが、彼らの音楽は主題が明確でなく、切れ間無くダラダラ続き、時には騒音としてしか聞こえないような不協和音を使ったりして、心に響いてこないのである。

こうした感想は私だけのものではなく、高名な音楽批評家・吉田健一氏は『私の好きな曲』のなかで次のように書いている。
ザルツブルグ音楽祭でのブルックナーの第七交響曲の演奏会で「・・・ところで私はその演奏をききながら、ぐうぐう眠ってしまった。第二楽章アダージョの途中でふっと目がさめたら、まだその楽章が続いているのを知り、すっかりびっくりした。なんと長ったらしい音楽だと思ったものだ。」
そして続けている・・・「ブルックナーをきくには忍耐がいる」と・・・。
全く同感なのである。

音楽を聴くのに「忍耐」が必要だなんて、それでは「音楽」でなくて「音苦」ではないか・・・。

そんな私がフト、生きている間に、食わず嫌いを少し抑えて、未知の分野に分け入ってみよう、そんな思いに駆られてブルックナーをきちんと聴いてみようと思い立ったのである。

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一つの契機はこのところ山と文学と音楽の分野で多くの刺激を受けている川島由夫さんの著書『ハムレットが好きな人のための音楽』を手にしたことである。
この中で物故した指揮者・朝比奈隆さんのブルックナーに対する大きな貢献を知った。

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大阪フィルを率いたその朝比奈さんにしても次のように述懐しているそうである。
「この人(ブルックナーのこと)の音楽は口数の少ない人の語る言葉のようだ。私たちにとって何と親しみにくく近寄りがたかったことか。(略)それは演奏するオーケストラのメンバーにとっても聴衆にとっても、努力と忍耐の長い時間であった。」

そんな朝比奈さんが後には「ブルックナー協会」の会長となり、全曲録音を三回も出すことになる。

吉田、朝比奈両氏が期せずして「忍耐」と述懐した。
ブルックナーを聴くためのキーワードは「忍耐」であるようで、それに欠けていた(というより何もそこまでして聴かねばならない理由がなかった・・・)私ごときただの好事家が、ブルックナーの気難しそうな門の前でウロウロしていたのは無理からぬことである。
その狭き門を通過できたら広大なブルックナーの世界が開けている、ということなのだろうか・・・。

今、なぜか手元にある4番と8番の2枚のCDをBGMのようにして聞いている。
それにD・バレンボイムが振る彼の交響曲全集を注文した。
届いたらこれをとっかえひっかえ「ながら聴き」しようと思っている。
いつか、気が付いたら熱狂的なブルックナーオタクになっていた・・・・なんてことになるかな。

スピードラーニングのように・・・・・・。

 

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コメント

消費税値上げ・・・一応〔困った〕とは言いながら声高にはならない、という人はみなさん余裕のあるんでしょうね。早くも〔仕方がない〕という声も聞こえますので本気で抵抗を試みるより先に諦めムードかもしれません。

昔読んだ〔ブラームスがお好き〕ビュフェの表装でしたか。思い出せません。
ブルックナーは名前だけは何となく聞いたことがあります。。。


投稿: おキヨ | 2013年10月 4日 (金) 16時50分

おキヨ様
これまでのように「高福祉・低負担」が維持できるなんて、もう幻想であることは国民の誰もが漠然とながらも感じているのだろうと思います。
しかし、負担が増えることは、それが目の前に現実として突きつけられると、誰しも嬉しくありません。
その狭間で揺れながら”しょうがないよね”というところに着地するのでしょうね。

さすがですね、参りました!
サガンの『ブラームスはお好き』(新潮文庫)の表紙がBernard
・BUFFETの作品であることを指摘できるなんて・・・。
私は全く関心がなかったのですが、ご指摘で見返しをみたら確かに作者の名前がありました。
有名な画家の、有名な作品なのですか?

投稿: 風花爺さん | 2013年10月 5日 (土) 06時54分

ビュフェの絵の特徴は、黒々と縁どられた鋭角的な線にあって、二人といない個性派の画家で、出身のフランスはもちろん、世界的にファンの多い画家です。
日本にもビュフェの熱狂的なファンが多く、静岡にビュフェ美術館があります。

私がブルックナーを知らないのでここはおあいこですね^^

投稿: おキヨ | 2013年10月 5日 (土) 11時43分

おキヨ様
懇切にご教示いただきありがとうございました。
お蔭で、私の数少ない画家のレパートリーにビュフェを加えることができます。
とはいえ、正直に言って私にはこの絵の良さが分からないのです。
美的感動が湧きおこってこないのです。
生れ落ちていらい、審美眼をどこかに置き忘れたままなんでしょうね。
困ったことです。

投稿: 風花爺さん | 2013年10月 5日 (土) 13時55分

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