« 三度も尻もち~御坂・十二ヶ岳 | トップページ | 「風立ちぬ」三題 »

元奥多摩山岳救助隊・金 邦夫氏の話を聞く

2013年7月23日

私たちの渋谷に拠点をおく山歩きのグループは発足して13年目に入る。
会員数は40人台で、今時では珍しく男性会員が半数を占めている。
易しい近郊の山歩きが中心で、それでも十分とはいかないまでも安全についての取り組みも進めている。

その一環として、先日金(こん)邦夫さんを招いて奥多摩エリアにおける遭難救助の実例に基づいた話を伺った。
同氏はこんなチッポケな集まりにお越しいただくのは申し訳ないくらい、山の世界では広く知られた方である。

金さんは幾つかの経歴を経て後、1994年から青梅警察署山岳救助隊の副隊長となり、この3月に退職するまでの間、奥多摩エリアでの数々の遭難救助活動を陣頭指揮されてきている。

Img285

私たちは、山でアクシデントに見舞われた場合には、救助される立場である。
それだけに、救助する立場からの視点には示唆を受ける点が少なくない。
多くの登山者にとって奥多摩の山は、東京の奥座敷の山という刷りこみがあって、組しやすい印象を持ってしまっている。
ところが実際は長沢背稜(雲取山から東へ延びる、東京と埼玉の県境尾根で長沢脊稜と言う向きもあり、また「ながさわせりょう」と読む人もいるが、金さんは「ながさわはいりょう」と・・・)のような奥深い山域やら危険なルートも少なくない。
侮って入山し、手痛いシッペ返しを受け、結果として年間で約40件の救助要請が発生するという、驚くような数字になっている。

Dscn1356

総論的にまとめれば、あまりにも登山の基本、セオリーに無頓着な登山者が多く、それが遭難の誘発原因になっている、という指摘である。

Dscn1357
この見方は私も同感である。

中高年になってからの登山者には、山岳会などに入って制約を受けることを嫌い、気ままな山歩きを楽しみたい傾向が顕著にある。
こうした登山者はえてして、登山の基本を学ぶことなく、読むものはせいぜいガイドブックの類だけと思われる。
天気の良い日に、道標のシッカリした山歩きをしているうちに”山なんて別にどうってことないじゃん”という慢心が生まれてくる。
これが中高年登山者の、遭難事故多発の底流になっている、という見方をしているのは私ばかりではない。

山歩きはスポーツではないから明文化されたルールはない。
登山行為を規制する法律もない。
あるのは長い登山の歴史の中で培われてきた経験則、マナー、エチケットなどの不文律である。
そうしたことを会得するには経験の蓄積が不可欠である。
中高年登山者の中には残念ながら、こうした基本を学ぶことがないままに山に入り、考えられないような初歩的なミスで事故に見舞われる遠因を自ら抱えている人が存在する。

金氏はこうした状況に本心では”オレは怒っているんだ!”と叫んでいるのだが、その心情は理解できる。

私も改めて謙虚に山に向かい合い、ゆめゆめ救助隊のお世話になることのないよう、自戒していこう,と思う。

 

|

« 三度も尻もち~御坂・十二ヶ岳 | トップページ | 「風立ちぬ」三題 »

登山」カテゴリの記事

コメント

長い経験経た風花さんでさえ、時々初心に戻るべく講義に出席される。 引きも切らずに山岳遭難者が多いということは、プロ、経験者の話に耳を傾けることを疎かにする人が多いのでしょうね。経験が浅いほど(聴く)ということを疎かにしてはいないでしょうか。

何の前準備もなく、とにかく実行したい・・・というのが登山に限らないようです。

投稿: おキヨ | 2013年7月23日 (火) 12時04分

おキヨ様
「初心、忘るべからず」
言い古された金言ですが、今でも至るシーンで使われているようです。
人間ほど忘れやす生き物はいないからですね。
もちろん、忘れることの「功」もあるのですが・・・。

何を始めるにしても、一足飛びに成れるものなどなく、大抵の人が階段を一段ずつ上るように、根気よく時間をかけて学んでいくでしょう。

どうかして、その辛抱ができなくて、セッカチに結果を出したいと、前のめりになるタイプがいますね。

山の場合、これがアクシデントを招く原因になりかねないのです。
山は常に危険と背中合わせですから、そのリスクを回避するには、コツコツと時間をかけて経験を積み重ねていくことが大事なことだと思います。
それだけのことをしていても不運にして遭難死してしまうこともあるのですが・・・。


投稿: 風花爺さん | 2013年7月23日 (火) 17時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/393418/52507584

この記事へのトラックバック一覧です: 元奥多摩山岳救助隊・金 邦夫氏の話を聞く:

« 三度も尻もち~御坂・十二ヶ岳 | トップページ | 「風立ちぬ」三題 »