« 北向地蔵から日和田山~奥武蔵の丘陵を歩く | トップページ | 重箱の隅?の山~破風山 »

草原の椅子~映画と本

2013年2月28日

文春の3月号でこの映画をプロデュースした原正人さんが書かれたもので「草原の椅子」のことを知りました。
そのロケ地がパキスタンの「フンザ地方」であり、しかも「ウルタル峰」などが映像に出ることらしいことを知るにおよんで、がぜん関心が高まりました。
ヒマラヤ山脈の西端になるカラコルム山地の懐にある「フンザ」。
パキスタンと中国を結ぶ「カラコルム・ハイウエイ」が通じてはいますが、
今でも春にはアンズの花が咲乱れる、不老不死の桃源郷とされています。

Img259 桃源郷・フンザを描いたものを借用しました。
ハイウエイの西側に「バトゥーラ山群」と称され、シスパーレ、ウルタールなど7千mを超える峰々が聳えています。        
   

Tanzaku432  ウルタールⅡ峰 7388m

早速宮本輝の原作を読み始め、その途中で映画を観ました。
「何があろうと、どこにいようと、俺のいるところは草原だ。そこには俺の椅子がある。」

原作に通奏低音のように流れているこの言葉に感銘した原さんが、最後のプロデュース作品にしようと、映画化への情熱を燃やして完成したのがこの映画です。
しかし、また原作が勝れているほど映像化するハードルは高いものです。

Tanzaku430 まだ下巻にまで読み進めていません。

ところで映画の出来栄えは?
私には十分に佳作でありました。
二人の50男の、ほとんどメルヘンに近い友情が縦糸になっていて、ドメスティック・バイオレンスで言葉を失った幼い子の子育てと、バツイチ同士の恋が横糸となっって織り成す一篇のドラマです。
今時の俳優には男女を問わず特段の関心はないのですが、それでも好感度の高い佐藤浩市が主役でいつもの通りお父さん譲りのいい味をだしています。

Main
さて、私にとってはこの映画の影の主役は「ウルタル峰」です。
標高こそ平凡ですが、落石と雪崩が頻発する極めつけの危険な難峰とされています。

Img260 ウルタールⅡ峰
冬季のアルプス三大北壁の単独登攀を最初に成功させ、世界的にみても傑出したクライマーとされた長谷川恒男が遭難死していることで、私には深く記憶されています。

Tanzaku431 長谷川恒男を描いたドキュメント。

長谷川恒男は名声をほしいままにしたクライマーですが、また悲運の持ち主でもあります。
雪(氷)と岩に対する高度な技術が要求されるアルプスでは大きな成果をあげたのに、技術以上のものが求められるヒマラヤでは、多くの挑戦をしながらことごとくに挫折を味わっていました。
失意にあった彼が乾坤一擲の挙に出たのが、その当時未踏峰では3番目の高度を持っていたウルタルⅡ峰です。
1990年、最初の挑戦で7020mまで肉薄したが、天候悪化で撤退。
翌年10月の再挑戦で5300m付近で雪崩に遭い、1300m流されて不帰の人となりました。

長谷川の無念を晴らしたのは1996年の日本山岳会・東海支部隊の山崎彰人と松岡清司のパーティーですが、下山中に松岡隊員が体調悪化により絶命しています。

本と映画の話にしなければならないところ、私にとって見果てぬ夢に終わってしまった西カラコルムの山のことになってしまいました。

|

« 北向地蔵から日和田山~奥武蔵の丘陵を歩く | トップページ | 重箱の隅?の山~破風山 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

クライマーと云われる方々の知識はゼロに近い私でも、長谷川恒夫の名とその容貌は記憶しています。

ウルタールⅡ峰の画像を拝見すると人間の近づいてはいけない、まさに神の場所という気がします。

壮大な山岳と佐藤浩市主演の映画であれば、折があれば観たい映画です。


投稿: おキヨ | 2013年2月28日 (木) 11時50分

おキヨ様
山は、天寿を全うすれば、もっと大きな足跡を残したであろうと、惜しまれる命を随分奪っています。
その点では戦争に似ています。
ただ、戦争は自分の意思は抹殺されてしまいますが、山は自らの意思で危険に向き合っているのですね。
それだけに、矛盾するようですが、登山という行為により不条理を感じてしまいます。

映画「草原の椅子」は是非、というほどではないと思います。
おキヨさんご推薦で、世評の高い「レ・ミゼラブル」を見損なっているのが心残りしているのです。

投稿: 風花爺さん | 2013年2月28日 (木) 15時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/393418/49653296

この記事へのトラックバック一覧です: 草原の椅子~映画と本:

« 北向地蔵から日和田山~奥武蔵の丘陵を歩く | トップページ | 重箱の隅?の山~破風山 »